開業準備
歯科医院の開業準備。採用と設備の計画を一緒に立てる

物件や診療台の話は進んでいるけれど、スタッフの採用はまだ決まっていない。その間にも、工事や支払いの予定は進みます。開業時に入れる設備を選ぶときには、誰が勤務し、どの診療の予約を受けられるかを、採用の進み具合と合わせて考える必要があります。
その患者さんは、いつ通えるか
「地域の方が長く通える医院にしたい」「子どもと家族を診たい」。その方針をもとに、患者さんが来られる曜日や時間を想像してみます。日中に通う家族を主に診る医院と、仕事帰りの方を受け入れる医院では、選びたい立地や診療時間が変わります。
メンテナンスを大切にするなら、初診の相談を受ける枠だけでなく、その後に必要な治療や管理を受ける枠も要ります。来てほしい患者さんが夕方にしか通えないのに、次の予約は平日の午前しか空いていない。そうならないかを、物件や診療時間を決める段階から見ておきます。
再診を、誰がいつ受け持つか
| その後の予約 | 勤務表と合わせること |
|---|---|
| 必要な治療の継続 | 担当する歯科医師勤務日と、治療に必要な時間 |
| メンテナンス等 | 担当する歯科衛生士等勤務日と、診療に必要な時間 |
次回までの間隔や必要な診療時間は、診療内容と患者さんの状態により異なります。
初診の枠だけで予定を組むと、治療が続く患者さんの再診が増えたときに受けきれなくなることがあります。院長・勤務医・歯科衛生士の勤務日に、次の診療を受けられる時間があるか。担当する人が休みの日には誰へ相談するか。受付から診療、準備・片付けまで、同じ時間に必要になる仕事もここで見ます。
採用予定の歯科医師や歯科衛生士は、入職日と勤務日が決まって初めて、開業時の体制に数えられます。それぞれの資格が必要な仕事を、助手の採用で補うことはできません。未経験の助手・受付には、教える人の時間も必要です。採用や育成が予定どおり進まなければ、最初に受ける診療や予約数を変えることになります。「採る予定の人数」で予約を開けると、その調整が開業間際に残ってしまいます。
機器は後で買えても、工事を後に回せるとは限らない
開業時から行う診療に必要な設備は、最初に使える状態にします。将来の増員や診療範囲の拡大に備える機器なら、後から買う選択もあります。ただし、そのときに壁や床の工事が必要なのか、設置中は診療を止めるのかで、追加の負担は変わります。
ユニットを増設する余地を残すなら、給排水・電源・吸引の設備容量、器材を洗浄・滅菌・保管する場所を設計時に業者へ相談します。機器の購入を待つ案でも、配管などは内装工事と同時に済ませた方がよい場合があります。追加する際の工事範囲と見積もり、納期、休診の有無を聞いてから、どこまで先に施工するかを決めます。
| 項目 | 開業時に入れる | 後で追加する |
|---|---|---|
| 手元に残る資金 | 開業前の支出が大きくなる | 購入を先に延ばせる場合がある |
| 工事・診療への影響 | 内装工事と同じ時期に進めやすい | 追加工事や休診の有無を業者へ聞く |
| 使い始める時期 | 担当者と使う準備がそろえば始められる | 発注から設置まで待つ時間がある |
設備代を払った後も、給与と家賃は続く
内装工事と機器の代金を払えば、開業に必要なお金の見積もりが終わるわけではありません。診療が始まれば、給与、家賃、材料費、広告費などの支払いが続きます。日本政策金融公庫の歯科医院向け創業計画書の記入例でも、設備資金と運転資金は別々に書く形式です。購入費をいくら用意できるかと、日々の支払いにいくら残すかは、分けて予算を取ります。
予定した売上も、それだけの患者さんを受けられる人員と予約枠があっての数字です。さらに、売上を計上する月と入金の時期がずれれば、支払いが先に来ます。患者さんが想定ほど来ない時期や、採用が遅れた時期にも、何をいくら払い続けるのか。そこを計算してから、設備に使える金額を決めます。
工事の完成日と、保険診療の開始日は別
工事の完成日だけでは、保険診療を始める日は決まりません。診療所の開設の届出・許可と、保険医療機関の指定は別の手続きです。候補地を管轄する保健所と地方厚生局に、必要な手続き、申請の時期、指定予定日を尋ねます。その日程をもとに、患者さんへ案内する診療開始日を決めます。
機器の設置やスタッフの入職・研修、予約システムの設定、院内外への案内にも、それぞれに必要な時間があります。一つの予定が遅れたとき、すでに告知した開業日に何を始められるのか。業者や採用担当と話す際には、相手の作業が終わる日だけでなく、医院が診療を始められる日を伝えておく必要があります。
採用や工事が遅れたとき、どこを変えるか
必要な人員がそろわなければ、開業日を動かすのか、当初の診療範囲を絞って始めるのか。どちらを選んでも、受け付ける予約と、その間の家賃・給与などの支出が変わります。どの条件が満たせなければ延期し、どこまでなら始めるか。契約や告知をまだ変更できる段階で、その案も持っておきたいところです。
参考資料
- 日本政策金融公庫|歯科医院の創業計画書・記入例
設備資金と運転資金、売上・経費の計算根拠を分けて記載する構成を参照。記入例の金額や患者数を、本記事の推奨値には使用していません。
- 目黒区「診療所、歯科診療所を開設される方へ」
開設手続きと保険医療機関指定を区別する説明の参照。実際の手続き・日程は、開設地の保健所と地方厚生局に確認します。